Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme
……何のために今まであってないような妄執に苦しみ抜いてそれを生命そのもののように大事に考え抜いていた事か。それはまるで貞世が始終見ているらしい悪夢の一つよりもさらにはかないものではないか。……こうなると倉地さえが縁もゆかりもないもののように遠く考えられ出した。葉子はすべてのもののむなしさにあきれたような目をあげて今さららしく部屋の中をながめ回した。なんの飾りもない、修道院の内部のような裸な室内がかえってすがすがしく見えた。岡の残した貞世の枕もとの花束だけが、そしておそらくは(自分では見えないけれども)これほどの忙しさの間にも自分を粉飾するのを忘れずにいる葉子自身がいかにも浮薄なたよりないものだった。葉子はこうした心になると、熱に浮かされながら一歩一歩なんの心のわだかまりもなく死に近づいて行く貞世の顔が神々しいものにさえ見えた。葉子は祈るようなわびるような心でしみじみと貞世を見入った。
やがて看護婦が貞世の部屋にはいって来た。形式一ぺんのお辞儀を睡そうにして、寝台のそばに近寄ると、無頓着なふうに葉子が入れておいた検温器を出して灯にすかして見てから、胸の氷嚢を取りかえにかかった。