Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 205.655 Zeichen · 406 Bildschirme

Aozora Bunko

見やられた。車夫が梶棒をあげようとする時女将が祝儀袋をその手に渡すのが見えた。

「さようなら」

「お大事に」

はばかるように車の内外から声がかわされた。幌にのしかかって来る風に抵抗しながら車は闇の中を動き出した。

向かい風がうなりを立てて吹きつけて来ると、車夫は思わず車をあおらせて足を止めるほどだった。この四五日火鉢の前ばかりにいた葉子に取っては身を切るかと思われるような寒さが、厚い膝かけの目まで通して襲って来た。葉子は先ほど女将の言葉を聞いた時にはさほどとも思っていなかったが、少しほどたった今になってみると、それがひしひしと身にこたえるのを感じ出した。自分はひょっとするとあざむかれている、もてあそびものにされている。倉地はやはりどこまでもあの妻子と別れる気はないのだ。ただ長い航海中の気まぐれから、出来心に自分を征服してみようと企てたばかりなのだ。この恋のいきさつが葉子から持ち出されたものであるだけに、こんな心持ちになって来ると、葉子は矢もたてもたまらず自分にひけ目を覚えた。幸福――自分が夢想していた幸福がとうとう来たと誇りがに喜んだその喜びはさもしいぬか喜びに過ぎなかったらしい。