Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
あの男の額を破ったものは私より別にある。しかしあの時の杖がかれに加えられなかったら私はどうなるだろう。きっと頭を割られているにちがいないと考え込んだ。そしてOの蒼い顔を眺めた。Oはだいぶさきから脚気で足をわるくしていたので、ぺたんこになって板敷の上に坐っていた。
「ひどい蚊だね。」
Oは嗄れたような、睡い声で言った。
「ほんとにひどい蚊だ。」
私は心からこの小さな憎悪すべき昆虫の襲撃を呪うた。殆んど無抵抗な条件の下に坐らされた檻の内部からも、力のない蚊をはらう音がぱたぱた聞えた。それが実に衰えた寂しい音だ。
拘留室の巡査は一時間ごとに交代した。そのたびごとに騒騒しい靴の音ががりがりした。黒板に私とOとの名前が記された。私はそれをふしぎにしかも別人のような心持でながめていた。他に拘留二、とあった。
巡査はOに檻房の中に入るように言った。Oはしかめ面をしながら、小さな入口から這入りかけると、
「帯を解くんだ。」とどなられた。
私は持物を調べられたあとになっても、別に内部へ這入れということを言われないので私はO一人入れるのは不当なようで、気の毒にも思った。
「僕も一しょに入れてくれませんか、二人とも同じい事件にかかわっているんですから……」