Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme
賢秀のことばを、信長は、眼をつむって聞いていた。敗れた降将のことばには、勝軍の中では聞かれない、人間の真実がこもっていた。
「お案じあるな」
と、信長は眼をひらき、そして賢秀の連れている子をじっと見つめた。鳳顔紅唇の美童である。信長は、思わずさけんだ。
「これは麒麟児だ」
そして藤吉郎の方へ、
「よい子ではないか。のう藤吉郎、そちは何と見る。これは栴檀の香りがするぞ。わが家の聟にいたしてもよい程な」
嘘とも思えない声であった。
「これへ、これへ」
鶴千代を自分のそばにさし招き、その頭を撫でながら、なお、幾度もいった。
「行く末、信長の三女を娶わそう。よい夫婦ができよう。――賢秀、親元のそちには、異存ないか」
敗軍の将は、男泣きして、黙然と頭を畳へ伏せていた。藤吉郎も自分の計らいが、戦果に功を挙げたばかりでなく、思わぬ花を結んだので、心から主君に礼をのべた。
――後に。
老獪徳川家康に座を譲らせ、関白秀吉にさえ憚られ、奥州の独眼龍政宗を、僻地に封じこめた智謀雄略の風流武人、蒲生氏郷は、実にこの子だった。この鶴千代だったのである。
庶民は水、政治は器といえよう。