Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.353 Zeichen · 371 Bildschirme

Aozora Bunko

「は。餅はよく喰らいまする」

と、答えた。

「近うよれ。餅を進上いたそう」

脇差を抜いて、信長は、その切っ先に、自分の前にあった菓子の一片をつきさした。――そして村重の方へ突き出した。

「頂戴いたします」

村重は静かにすすんで、顔へ刀の届く処で手をつかえた。おそらくは両手を出すかとみていると、

「どうぞこれへ」

と、大きく口を開きながら信長の顔を見た。歯までが、乱杭歯で、黄いろくて、汚い口であるが、その顔は神色自若として、わずかの愛嬌さえたたえていた。

餅の切れが、村重の口へはいると、信長は脇差を納めて、

「あは、は、は」

と、高く笑った。

村重は口をうごかしながら、餅をよく噛んでいたが、ようやく、嚥みくだしてから、

「…………」

にやりと声なく笑った。

信長はすぐ好きになった。小さな憎悪はいつもこう急転するのが彼の常だった。

「藤吉郎。これは、そちの賞めた通り、おもしろい男よ。奥でもてなして遣わせ。信長も後で臨もう」

と、いった。

藤吉郎は、彼を奥へ連れた。信長のいない所で、どうだと訊ねた。村重は、

「べつに……」

と、変哲もない顔したが、すぐつけ加えて、

「其許のすすめにまかせ、仕えてもよい」