Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme

Aozora Bunko

茶なといたさん、朝立ちなれば朝まだきにも城へ来いと、諄いばかり仰せを重ねられた信長公が……なんとてはかく光秀がお嫌いになられたのか。青山与三をおつかわしあったのも、光秀の顔を見るのがお嫌なので、こちらからの登城を避けるお心から出たものではなかろうか」

考えまい、思うまい。そう努めれば努めるほど、何たる愚痴、心は綿々と、声なき独り言を、腐水の泡つぶのようにつぶやいて熄まない。

「――誰が観ん、この花も、はや無用」

彼は、床の間の、大きな瓶へ手をかけた。見事に挿けてあった花も、彼の腕にみだれ、瓶の口からこぼれる水は、縁側まで滴々と音をさせて運ばれて行った。

「はや行くぞッ。立つぞここを。支度はよいかッ」

そこから大声で家中の者へ呼ばわりながら、光秀は、その壺を、両手で斜めに、肩のあたりまでさしあげた。そして庭さきの平たい沓ぬぎ石を目がけて、力まかせに叩きつけた。

陶土の破片、水のしぶき、それが快然たる一爆音を発して、光秀の面から胸へ刎ね返った。光秀は、濡れた顔を、夜空へあげて、呵々と笑った。独りで笑っていた。

夜は深い。じっとり霧がこめて、いとど蒸暑い夜だった。