Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
表御堂ばかりでなく、ここの客殿も、棟から棟へつづく十幾坊の堂舎も、たとえば地殻から揺りあげて来た地震の力にでも委されているかのように、何とも名状しがたい物音と凄愴の気にくるまれて来たのであった。
「……?」
こういうとき、いかなる人間の思力も、他に紊されずにはいられない。信長の面色も血を退いていた。近衆小姓の面々もさっと色を失っていた。
それも呼吸の数にすれば、わずか七息か十息の間に過ぎない佇立であったろう。忽ちすぐ近くの大廊下を非常な迅さで駈け過ぎようとした人影があった。烈しい声でつづけさまに、
「殿っ、殿っ」
と、その血まなこは、あらぬ方へ求める人を捜していた。
小姓たちは、一斉に、
「森どの、森どの。殿は、こちらですぞ」
と、声を合わせて、居どころを示し、信長自身もまた、
「於蘭、於蘭、どこへ参る」
と、呼ばわった。
「おうっ、そこにおいで遊ばしましたか」
森蘭丸なのである。のめるようにひざまずいた彼の姿を見ただけで、信長はすでに五体の皮膚から感じていたこの異様なるものの気はいが、決して表御堂のさむらい達の争いや厩者の喧嘩などという生やさしいことではないことをなおさら強く覚った。