Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

小野の里は、夜霞のあとになって行く。急に、彼女の理性がうごいた。あまり人里遠くなってもいけないと。

「三蔵。もういいでしょう」

「あ。もう大丈夫だ。……が、事のついでに、もう十町ばかり急いでしまおう」

「……すると。何処」

「すぐそこは、長良の川原じゃねえか。稲葉山が見えてらあ」

「そうそう、小さい時に、三蔵と、よく遊びに来たことがありましたね」

三蔵は、ゾクとしてすぐ体じゅうが火照ってくるような経験のない昂奮につつまれて、これはものになる、とうぬ惚れた。

長良川の中川原へ出た。於通は休むところを見まわした。するともう三蔵は、船橋を渡っていた。追いかけて、

「三蔵。どこまで行くのです」

「渡りましょうよ。こんな晩、歩くのもうれしいじゃございませんか」

「けれど……歩いてばかりいても」

「わかっております。京都へお出でになりたいんでしょう。――ですからさ、黙ってついておいでなさい。世の中がおもしろくねえんで、グレた真似をしていますが、三蔵だって、日置大炊のせがれです。旧主のおひい様におたのみをうけて、粗略にゃいたしません。……こう歩きながらも、自分でお供して京都へのぼりたいが――と、いろいろ思案しているんで」