Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「あたしのいるこのあたり、もうこれでスイスかしら。まだだわね。」
山山の連りをぐるりと見廻す千鶴子の胴の黄色なベルトが、今はただ一本の人里の匂いであった。
山の頂を横にそれ曲った所に山小屋があった。矢代はピッケルを二本と、靴下とサンドウィッチをそこで買い、千鶴子と頒け持ってまた山路を歩いた。小舎の番人から、間もなく見える氷河を渡らねば向うの山頂へ出る路は断たれていると聞き、思い出にそこを一度渡ってみようと云うので、買物の準備を一応してみたものの、その氷河の幅を見なければまだ二人には決心がつきかねた。
「塩野さんも去年そこの氷河を渡ったとか、仰言ってましてよ。そこを渡ると、向うの谷間に、羊の群が沢山いるんですって。」
千鶴子は子供っぽく眼を輝かせて矢代を見ながら、
「ね、それを見ましょうよ。夕暮になると、羊飼いがチロルの歌を唄って羊を集めるんですって。その美しいことって、もう何んとも云われないって、そんなに云ってらしたわ。それを見ましょうよ。」
「見るのは良いが夕暮じゃもう帰れないでしょう。」と当惑げに矢代は云った。
「でも、山小舎があるから、そこで泊れるんだそうですよ。