Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
足で踏みつけた茎も二人の過ぎた後方で戻り合う音を立てていた。
「君、これは後へも帰れなければ、前へも行けなくなるぞ。向うが見えないんだもの。たいへんなことをし出かしたものだ。」
「だって、かまやしないわ。」
「無茶だね君は。ここが行けると思えますか。」
こう云っているときでも、もう強い茎の群団は二人の周囲を隙間なく押し締めて来た。二人は身動きも出来ないばかりか、両足の間へも跳ね返って来る茎から足を抜くのも困難だった。
「もう少し行きましょう。折角ここまで来たんですもの。抜けられるわよきっと。」
また千鶴子は動き出した。矢代は汗が出て来たが仕方もなく暴暴しく裏白の絡りついた茎を踏みつけて云った。
「氷河をわたるのよりこっちの方がよっぽど骨だ。」
「でも、これは死ぬ危険はないわ。」
「しかし、無駄だこんなことは。」
夫婦喧嘩のような云い合いをしているときでも、よろめき倒れそうな千鶴子を彼は手で掴んでひき上げねばならなかった。服のどこかが絶えず茎の歯にひっかかってぶりぶりと鳴った。ときどき立ち停っては森の梢が見えて来るかと空を仰いだが、行けども行けども羊歯の葉のようなぎざぎざの頭ばかりで、千鶴子もだんだん心細くなったらしかった。