Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
真紀子は湯から出たのだろうか、這入ったのだろうか。――久慈はさきほどちらりと見た真紀子の手首の長い初毛を思い出した。思いにつれて、ある春の日、箱根の浴槽で自分の横に浸った芸者らしい婦人の堂堂とした白い肌が、水面へ浸る毎に、総立ち上った長い初毛のそれぞれの先端からぶつぶつと細かい無数の水泡を浮きのぼらせていた壮観さが、瞬間浴槽の中の真紀子の姿となり代って浮かんで来るのだった。
久慈はやがて自分の身の危くなるのも知らぬげに、こうして楽しみ深い幸福に身を任せているのも、ここには恐るべき何ものもないからだと思った。しかし、なぜ真紀子の身体が自分をこんなに牽きつけるのであろう。――久慈は昼間あれほど高有明に会おうと決心していたことも、いつの間にかその考えも消えている自分だと思った。けれども、これも真紀子が電話をかけておいたからには、必ず会うだろうとだけは思い、会って何になるのか分らなかったが、会ったそれだけ何事か起るにちがいないとは漠然と感じられた。
「面白いのはそれだ。何が起るか分らんということだけだ。」
久慈はそんなに思いながら煙草を吹かしているうちに、ふとまた突然、真紀子は高を愛しているのではなかろうかという疑いが起って来るのだった。