Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme
と、隣の座敷にしめやかな話声がする。それは狸の医師の声で、病人のお嬢さんは、其処に寝ているらしかった。甚内は襖の隙から覗きたいと思って、注意すると小さな穴があったので其処へ隻眼をやった。髪の黒い※(きれい)な女の寝ている枕頭に狸の医師が坐って、その手の脈を執っていた。
甚内は狸にたぶらかされていた。彼は村の背後(うしろ)になった山の上の、土地の人からカンカン岩と呼ばれている岩の穴に眼をやって、一心になって覗いていた。
その甚内は間もなく病死した。村の人は甚内は狸を揉み出していたから、狸に敵を討たれて死んだと云った。――これは私が少年の時に聞いた話である。
私の郷里には、またこう云う話もある。それは、某と云う男があって、ある夜、路を帰っていると、一疋の狸が木の葉を採って体に貼っているので、某は笑って、
「そんなことをしたってだめじゃ、俺が好く化けることを知ってるから教えてやろう」
と云うと、狸は翌晩になって、その男と約束の処へ来た。その男は用意していた袋を出して、
「この内へ入ったら、思うものになれる」
と云った。狸がほんとにして入ると、その男は袋の口をぐいとしめて、突然地べたに投げつけて殺した。