Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
最早山の上でもすっかり雪が溶けて、春らしい温暖な日の光が青い苔の生えた草屋根や、毎年大根を掛けて干す土壁のところに映っていた。
丁度、お島は手拭で髪を包んで、入口の庭の日あたりの好いところで余念なく張物をしていた。彼女の友達がそこへ来た時は、「これがお島さんか」という顔付をして、暫く彼女を眺めたままで立っていた。
お島は急いで張物板を片附け、冠っていた手拭を取って、六年ばかりも逢えなかった旧の友達を迎えた。
「まあ、岡本さん――」
とその友達は、お島がまだ娘でいた頃の姓を可懐しそうに呼んだ。
一汽車待つ間、話して、お島の友達は長野の方へ乗って行った。その日は日曜だった。高瀬は浅黄の股引に、尻端を折り、腰には手拭をぶらさげ、憂鬱な顔の中に眼ばかり光らせて、他から帰って来た。お島は勝手口の方へ自慢の漬物を出しに行って来て、炉辺で夫に茶を進めながら、訪ねてくれた友達の話をして笑った。
「私が面白い風俗をして張物をしていたもんですから、吃驚したような顔してましたよ……」
「そんなに皆な田舎者に成っちゃったかナア」
と高瀬も笑って、周囲を見廻した。煤けた壁のところには、歳暮の景物に町の商家で出す暦附の板絵が去年のやその前の年のまで、子供の眼を悦ばせるために貼附けて置いてある。