Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
と言ったのは、この青木という男である。青木は八時頃に帰った。それから相川は本を披けて、畳の上に寝ころびながら読み初めた。種々なことが出て来る。原や高瀬なぞの友達のこともある。何処へ嫁いてどうなったかと思うような人々のこともある。
「人は何事にても或事を成さば可なりと信ず。されどその或事とは何ぞや。われはそを知らむことを求む、されど未だ見出し得ず。さらば、斯く闇黒の中に坐するは、吾事業なるか――」
ずっと旧いところの稿には、こんなことも書いてある。
豪爽な感想のする夏の雨が急に滝のように落ちて来た。屋根の上にも、庭の草木の上にも烈しく降りそそいだ。冷しい雨の音を聞きながら、今昔のことを考える。蚊帳の中へ潜り込んでからも、相川は眠られなかった。多感多情であった三十何年の生涯をその晩ほど想い浮べたことはなかったのである。
寝苦しさのあまりに戸を開けて見た頃は、雨も最早すっかり止んでいた。洗ったような庭の中が何となく青白く見えるは、やがて夜が明けるのであろう。
「短夜だ」
と呟いて、復た相川は蚊帳の内へ入った。
翌日、原は午前のうちに訪ねて来た。相川の家族はかわるがわる出て、この珍客を款待した。