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Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

そういうことを機会に別れようとして、彼女の去る日をのみ待っていたものは、一体誰か。

制え難い悔恨の情が起って来た。おせんがこの部屋で菫の刺繍なぞを造ろうとしては、花の型のある紙を切地に宛行ったり、その上から白粉を塗ったりして置いて、それに添うて薄紫色のすが糸を運んでいた光景が、唯涙脆かったような人だけに、余計可哀そうに思われて来た。大塚さんは、安楽椅子に倚りながら、種々なことを思出した。若い妻が訳もなく夫を畏れるような眼付して、自分の方を見たことを思出した。彼女の鼻をかむ音がよくこの部屋から聞えたことを思出した。

今居る書生の一人がそこへ入って来た。訪問の客のあることを告げた。大塚さんは沈思を破られたという風で、誰にも逢いたくないと言って、用事だけ聞いて置くようにとその書生に吩咐けた。

「いずれ会社のものを伺わせます、その節は電話で申上げますッて、そう言ってくれ給え」

と附添えて言った。大塚さんが客を謝るというは、めずらしいことだった。

書生が出て行った後、大塚さんはその部屋の内を歩いて、そこに箪笥が置いてあった、ここに屏風が立て廻してあった、と思い浮べた。