Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
「私の一生には夢が附纏っている」と、よく仰いました。こういう風ですから、夢見が好につけ、悪につけ、それを御目が覚めてから気になさることは一通りで無いのでした。奥様は今までが今までで、言うに言われぬ弱味が御有なさるのですから、御心配のあまり、私までも御疑いなさるような言を二度も三度も仰いました。奥様は短い一夜の夢で、長い間の味方までも御疑いなさるように成ましたのです。――風雨待つ間の小鳥の目の恐怖、胸毛の乱れ、脚の戦慄、それはうつして奥様の今の場合を譬えられましょう。
三番の上汽車で旦那様は御帰になりました。御茶を召上りながら長野の雪の御話、いつになく奥様も打解けて御側に居っしゃるのです。私は買物を言付かって、出掛しなに縁を通りますと、御話声が障子越に洩れて来る、――どうやら私のことを御話しなさる御様子。
立竦んで息を殺して聞いて見ました。奥様はこんなことを旦那様に御話しなさるのでした。さ、その御話しというのは、あれも紛失った、これも紛失った、針箱の引出に入れて置いた紫縮緬の半襟も紛失ったと御話しなさいました。どうも変だと思召して私の風呂敷包の中を調べて見ると、その半襟やら帯上やら指輪やらが出て来たと御話しなさいました。