Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme
――あたしの母は、今でも言う、姉さんが味方が原の秋草の中を、馬に乗って美しい振袖を着ていった。これはお前にやるよといったものまでみんなもっていってしまった。お嫁にゆくとなったらケチになって、何もかも持っていった。姉さんが御奉公に出たころは、家も富貴だったので、市ヶ谷のあまざけや(有名な呉服店)で、好みで染めさせたものばかりだったが、私は子供心にもこの嫁入りの仲人が変だと思った。昔のお金は小判で重いのに、包んできた水引のかかった奉書は薄っぺらで軽かった。よっぽどたって嫁入りさきにたずねていったら、連合いも、姑も、姉も、みんながあたしの姉さんの着物を着ていた。
無力の巧んだ一種の略奪であった。さすがの御直参湯川氏も考えさせられた。これではならないと働きものの二女を伴れて江戸へ出た。江戸には住みすてた邸もある。池の中には何かしらが残っていよう。深川佐賀町の廻船問屋には自分の妹が片附いている。商人には障りがなかったということが彼を心強くさせもした。
紅葉を踏んで箱根の山も越した。以前の住家へゆくと玄関の両側にたてた提灯の定紋は古びきって以前のままだが、上方の藩の侍が住んでいて、取次の男が眼をむいて睨んだ。