Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme
その下で八十の彼女は、日ごとに、六ツ折りの裾に絵をかいた障子屏風を廻らし黒ぬりの耳盥を前におき、残っている歯をお歯黒で染めた。銭亀ほどのわりがらこに結って、小楊子の小々太い位なのではあるが、それこそ水の垂れそうな鼈甲の中差と、みみかきのついた後差しをさした。鏡台の引出しには「菊童」という、さらりとした薄い粉白粉と、しょうえんじがお皿に入れてあった。鶏卵の白味を半紙へしいたのを乾かして、火をつけて燃して、その油燻をとるのに、元結でつるしたお小皿をフラフラさせてもたせられていたことがあった。ある時、お皿の半分だけしか真黒にならなかったが、アンポンタンらしい理屈を考えた。どうせ、毎日おばあさんが拭いてゆくのだからと――今思えば、それが眉墨であったのだが――
祖母は身だしなみが悪い女を叱った。
「おしゃれではないたしなみだ、おれは美女だと己惚れるならおやめ。」
文化生れのこの人は、江戸で生れはしなかったが、江戸の爛熟期の、文化文政の面影を止めていた。万事がのびやかで、筒っぽのじゅばんなど、どんなに寒くても着なかった。
ある年九月廿日、芝の神明様のだらだら祭りに行くので、松蔵の俥に、あたしは祖母の横に乗せられていた。