Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme
「葛籠はまいりましたか?」
と洒然として訊ねた。
哀れな少年猪之さんは寒夜の火事と、重い葛籠が災いして死んでしまった。
テンコツさんは大屋さんから立派な家主さんに代った。人形町通りも半分焼けたので銀座に似た煉瓦建になった。その幾軒かはテンコツさんの持家であった。住居も紳士風にした。石のような羊羹を紙に包んでくれなくなった。
大きな納屋――物置きが母屋から離れたところに出来たと思ったらその隅に床をつくり、畳を二畳ばかり敷いておやそさんのいるところが出来た。沢庵桶や漬け菜との同居である。あんまりの事に、こんどは私の母が不服だった。
「家からの仕送りが毎月行くのに、まるで……」
そんな年齢でもなかったであろうに、おやそさんは鼠の骨のようにほしかたまっていた。でも何かあると、例の葛籠の中に焼けのこった裾模様の派手なのを着てくるのではたのものの方が困っていた。彼女の嫁入り衣裳なのだから、いかに黒の紋附でも悲惨だった。
おやそさんは忠実に雇われてきた。夜でも急用があるといえば、巾の広い木綿じまの前掛けをかけて、提灯をさげて、朴歯をならして、謹しやかに通ってきた。