Japanische Klassiker mit Furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme
うすぐらい行燈の光でじっとおゆきは相手の面をみつめながら、……今朝からのできごとを手短に話した。
「――御苦労でした」
話をききおわった伊兵衛は、鋭い眼にありありと感動の色をうかべながら、
「同志の者のために思わぬ御迷惑をかけました。拙者からあつくお礼を申し上げます」
「つきましては」
おゆきは容を正して、
「この文匣の中には何が入っているのか、お聞かせ願いたいと存じます」
「……それを聞いて、どうなさる」
伊兵衛はぴりっと眉をあげた。――おゆきは臆せずに相手を見て、
「わたくしはあのかたを正しいおかただと存じました、けれど万一にもそうでないとしたら、失礼ではございますけれど、あなたにお渡し申すことはできませぬ」
「……もし話さぬとしたら?」
「このまま持って帰ります」
伊兵衛はぴたっと沈黙した。おゆきはまたたきもせずに相手をみつめている、……行燈の油皿でじりじりと油の焼ける音が、寝しずまった家内に生物のつぶやきのごとくきこえている。
「――よろしい、話しましょう」
伊兵衛はやがていった。「この中には、新庄藩主戸沢上総介殿の誓書が入っているのです。尊王攘夷を朝廷に誓い奉る誓書です。