Japanische Klassiker mit Furigana
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つきのまつやま
月の松山
山本 周五郎
Lesen Sie 月の松山 (つきのまつやま) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.451 Zeichen · 41 Bildschirme
一
一
宗城孝也は足袋をはきながら、促すように医者のほうを見た。花崗道円は浮かない顔つきで、ひどく念いりに手指を拭き、それから莨盆をひきよせて、いっぷくつけた。
「やはりそうですか」と孝也が訊いた。
道円は聞えなかったように、じっと、煙管からたち昇る煙を見まもっていた。
唇の厚い、眉毛の太い、酒焼けで赭くなった艶のいい顔が、とつぜん老人にでもなったように、暗く皺立ってみえた。
「間違いありません」と道円は云った、「お気の毒ですが、もう間違いはありません」
孝也は足袋のこはぜをしっかりと掛け、坐り直して医者の眼を見た。
「すると、期間は、どのくらいですか」
道円は「さよう」と云って、庭のほうへ眼をやり、それから煙管を詰め替えて、またいっぷく吸いつけた。
「さよう」と道円は云った、「人によって違うが、このようすだと、おそくとも一年、早ければ百日、……百日より早いことはあるまいが、一年よりおそくはないと思います」
孝也は頷いた。顔の硬ばるのが自分でよくわかった、全身の血がひいてゆくような感じで、眩暈が起こりそうであった。
「――百日、というと、み月ばかりですね」
「人によって違うから、むろん断言はできません」