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Japanische Klassiker mit Furigana

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まつばやしへんや

松林蝙也

山本 周五郎

Lesen Sie 松林蝙也 (まつばやしへんや) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.092 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

水をうめると見せて、実は熱湯の中へさらに熱湯を注いだのである。

――満ちた心気の弛むその虚、一分も外さずその虚を衝いたのである。――蝙也は歎息して、

「兵法の道ほど蘊奥の深いものはない、多年の研鑽にいささか会得したと信じていた蝙也も、一女子のおまえに狙われれば、こんなに無造作にしてやられる、まだまだ俺などは未熟者だな、――町、まさに蝙也の敗北だ、約束どおり暇をとらせるぞ」

そう云ったが、町はそこへ膝をついたまま袂で顔を蔽っている。――彼女は今こそ、自分の本当の気持が分ったのだ。

「――どうした。なんだ泣いているのか、家へ帰るのがそんなに嬉しいのか?」

「いえ、いえ違います」

町は噎びあげながら云った。

「旦那さま、お願いでございます、どうぞ今までどおりお側へおいてくださいませ」

「なに、なにを云う」

「お側へおいてくださいませ、町は……もうとてもお側から離れることができませぬ、たとえ側女でもいといませぬゆえ、どうぞ、どうぞお側において――」

真実の叫びだった、今にして知る、――あの時蝙也を憎んだと思ったのは、乙女の胸に生れて初めて芽した嫉妬であったのだ。そして、それはいよいよ暇が出るどたん場になって、はっきりと本当の姿を顕わしたのだ。