Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ますおとし

枡落し

山本 周五郎

Lesen Sie 枡落し (ますおとし) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.765 Zeichen · 67 Bildschirme

Aozora Bunko

どんなに悪い人にもせよ、こっちがお父っつぁんとして大事にすれば、それほどあくどいことばかりする筈はないだろう。人間はときによってぐれることもある、それが生れつきならべつだが、あの人はぐれだすまえにはきまじめで、口かずも少なく仕事に精をだしていたそうだ。おれはよくは知らない、ぐれだしてからのことしか知らないが、伊予巴の店の者からよく聞いたものだ。

「ためしてみるのもいいじゃないか」と芳造はあるきながら呟いた、「――あの人も人間だ、こっちのやりかたによれば、世間なみなくらしに戻れるんじゃあないか」

そんな望みのないことはわかっていた。彼は千太郎がどんなことをしたかをよく知っている、ぐれだしたのに理由はなかった。舅が死んで、怖い者がいなくなったとたんに、本性をあらわしたという感じであった。それから十余年、仕事には手も触れず、おばさんから金をせびって博奕場へ入りびたりで、金や物のないときには、まるで鬼か悪魔のように暴れた。

「あれはなにか理由があったからではない、本性だ、生れつきの性分だ」と芳造は呟いた、「あれはなおらない、こっちがどんなにやってみてもだめだ、だめだろうというほうが本当だと思うな」