Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
先生が読み聞かせる度に、娘は点頭いて見せる。それを眺めると、学校の他の青年と四人ほど並んで一緒に洗礼を受けた時のことが夢のように捨吉の胸に浮んだ。矢張、先生の司会で、繁子の音楽で、信徒一同の歌で、この同じ会堂で。あの時分のことを思うと青年会だ親睦会だ降誕祭だと言って半分夢中で騒いだ捨吉の心は何処へか行って了った。会堂風に造られた正面のアーチも、天井も、窓も同じようにある。十字架形の飾りを施した説教台も、その上に載せた大きな金縁の聖書も同じようにある。しかし捨吉の眼に映るものは、すべて空虚のように成って了った。曽て彼の精神を高め、華やかにしたと思われることは幻のように消えた。凱歌を奏するような信徒一同の讃美が復た始まった。
「ハレルヤ、ハレルヤ――」
病から回復すると同時に受洗の志を起したという可憐な小羊を加えたことは、一同の合唱に一層気勢を添えるように聞えた。
「ハレルヤ、ハレルヤ
ハレルヤ――アーメン」
浅見先生の説教、祈祷なぞが有って、やがて男女の会衆が散じかける頃には、捨吉は逸早く靴屋の側を離れ、皆なの中を通り抜けて、会堂の出入口にある石の階段を下りた。