Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

二

二

暑中休暇が来て見ると、彼方へ飛び是方へ飛びしていた小鳥が木の枝へ戻って来たように、学窓で暮した月日のことが捨吉の胸に集って来た。その一夏をいかに送ろうかと思う心地に混って。彼はこれから帰って行こうとする家の方で、自分のために心配し、自分を待受けていてくれる恩人の家族――田辺の主人、細君、それから、お婆さんのことなぞを考えた。田辺の家に近く下宿住居する兄の民助のことをも考えた。それらの目上の人達からまだ子供のように思われている間に、彼の内部に萌した若い生命の芽は早筍のように頭を持上げて来た。自分を責めて、責めて、責め抜いた残酷たらしさ――沈黙を守ろうと思い立つように成った心の悶え――狂じみた真似――同窓の学友にすら話しもせずにあるその日までの心の戦いを自分の目上の人達がどうして知ろう、繁子や玉子のような基督教主義の学校を出た婦人があって青年男女の交際を結んだ時があったなぞとはどうして知ろうと想って見た。まだ世間見ずの捨吉には凡てが心に驚かれることばかりで有った。今々この世の中へ生れて来たかのような心持でもって、現に自分の仕ていることを考えて見ると、何時の間にか彼は目上の人達の知らない道を自分勝手に歩き出しているということに気が着いた。