Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
スチュワーデスは返事をしなかった。じっとエンジンの方を見詰めていた。その真剣な横顔に、五郎はふと魅力を感じた。やがてエンジンの形も見にくくなった。黒い飛沫が窓ガラスの半分ぐらいをおおってしまったのである。斜めうしろの乗客たちも、異常に気付いて、ざわめき始めた。
スチュワーデスは何も言わないで、足早に前方に歩いた。操縦席の中に入って行った。その脚や揺れる腰を、五郎はじっと見ていた。病院のことがよみがえって来た。
〈今頃騒いでいるだろうな〉
五郎は病室を想像しながら、そう思った。病室には彼を入れて、四人の患者がいた、それに付添婦が二人。騒ぎ出すのはまず付添婦だろう。患者たちは会話や勝負ごとはするけれども、お互いの身柄については責任を持たない。精神科病院だけれども、凶暴なのはいない。一番古顔は四十がらみの男で、電信柱から落っこちて頭をいためた。この男はもう直っているにもかかわらず、退院しない。会社の給料か保険かの関係で、入院している方が得なのだと、付添婦が教えて呉れた。電信柱というあだ名がついている。
「図々しい男だよ。この人は」
「うそだよ。そんなこたぁないよ」