Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
四
「何もございませんけれど、あちらに」
と掌を動かした。「お酒など用意してありますから」
お通夜だ、しまったと私は心の中で膝を叩いた。先刻玄関を入るとき、私は、不思議なざわめきが、泥竜館のどこかで起っているのを感じていたのである。天願氏は平然としておかみさんの後について歩いて行った。始めから予期していたことに違いない。
重い足を引きずりながら、廊下を歩き出すと、旅川が私に言った。
「皆酒飲むのだろう。僕は出ないよ」
「出ないったって――」と私が何か言おうとしたら、廊下の曲角で天願氏が、何を話しているんだというそぶりでふりかえった。私は冷たい廊下を踏んでそちらに行った。
旅川はその廊下の反対側に姿を消した。私がよく知らぬ下宿屋の、三四度しか会ったことのない娘が死んだだけなのに、私はどうして沈欝なる通夜の座で苦い酒を飲まねばならないのか。はっきりと、今から酒を飲むぞということが現実感がなかった。迷路に追い込まれた羊のように、私は自分の意志をうしなって天願氏の後にくっついてとある部屋に入って行った。
四
十畳位の広さの部屋に、十四五人の男達が車座をつくり、おのおの客膳を前にして酒を飲んでいたのである。