Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

私がマッチをすった。青い焔が燃え、赤い表紙が生き物のように反り始め、やがてそれが赤い焔になって行った。かすかな哀惜の思いに胸がつまった。私は電信の下士官に話しかけた。

「今日の放送は、何だったのかな」

「さあ本土決戦の詔勅だろうと言うのだがね」

「誰が言ったんだね」

「電信長もそう言ったし、吉良兵曹長もそんなことを言った」

私は焔を眺めていた。熱気が風の具合でときどき顔にあたった。厚い暗号書は燃え切れずにくすぶったと思うと、また頁がめくれて新しく燃え上った。煙がうすく、風にしたがって空を流れた。布地の燃える臭いが、そこらにただよっていた。時々、何か燃えはじける音がして、火の粉がぱっと散った。

「いよいよ上陸して来るかな」

棒で暗号書をつつき、かき寄せると、また新しい焔が起った。煙がさらにかたまって上った。

「あまり煙を出すと、グラマンが来たとき困るぞ」

「今日も来ないよ。昨日も来なかったから」

そう言えば、グラマンは、見張の男を殺した日を最後に、昨日も一昨日も姿を見せなかった。飛行機が来ないということは、上陸の期がいよいよ迫って来ているせいではないかと思った。