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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

「よし、それでよし」甲斐はあとを聞きたくなかったのだろう、舎人の言葉を遮って立ちあがった、「いま村山喜兵衛をよこす、辻村平六もいる、風呂を浴びてくつろいだら、三人でゆっくり話すがいい、私は江戸へ出てから会うことにしよう」

舎人は両手を突いて甲斐を見あげたが、甲斐は眼をそむけたまま出ていった。

その夜、甲斐は眠れなかった。疲れきっていて、身も心もぐったりしているのに、神経だけがきみの悪いほど冴え、眼に見えない巨大ななにかが、現実に自分の上へ崩壊してくるような、はっきりしない不安が繰り返しおそいかかるのを、感ずるのであった。

「涌谷をなだめなければならない」甲斐は仰臥したままそう呟いた、「涌谷の考えは白刃の上を跣で渡るようなものだ」

成否の対率は千に一つか、万に一つというくらいであろう。境論で幕府老中の評定にもってゆくことは、伊達家中の不取締という非難を受ける。そのとき「酒井と兵部との密契」をもちだすとして、老中がはたして受理するかどうか。仮に受理されたとして、老中がどういう態度に出るか。

「いや、受理することはあるまい」甲斐は枕の上でそっと頭を振った、「――六十万石を揺り潰そうという企みが、閣老ぜんたいの謀議でないとしても、事が表面に出れば幕府の威信にかかわるから、おそらく一顧も与えはしないだろう、密契をもちだす