Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうなるのだ、周防」と甲斐は口の中で呼びかけた、「――どうなるのだ、これからどうなってゆくのだ、周防、おれは続かない、おれはもう挫けてしまいそうだ」

おれは独りだ。頼る者もなし、相談する者もいない。いまでは涌谷までが重荷になろうとしている、周防。おれをこんな事に巻きこんだのはおまえだ、そして自分は先に死んでしまった。涌谷とおまえとおれと、三人で力を合わせてやる筈だった。それがいまはおれ一人だ。

「云ってくれ周防」と甲斐は口の中でまた呼びかけた、「どうなるのだ、これからどうなってゆくのだ」

甲斐はじっと耳をすました。まるで周防の答えを聞こうとするかのように、――甲斐は自分が虚脱していることを知った。なにか慥かなもの、自分を支えてくれる柱のようなものを欲しいと思った。――けんめいに追いかけていたものが、追いつけないとわかったときのような絶望と、反対に自分が追われていて、ついに追いつかれそうになったときのような恐怖とが、前後から同時に緊めつけてくる。その圧迫する力の強大さと、避けることができないという事実の下で、甲斐はわれ知らず呻き声をあげた。

そのときまた、あのほのかな匂いが、ふんわりと甲斐を包んだ。