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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

往き来の人たちは、六郎兵衛の姿を見ると、たいていの者が道を避けながら、きみ悪そうな眼で眺めた。

「そうか」ふいに六郎兵衛が立停って、玄四郎のほうへ顔を向けた、「そうか、わかった、思いだしたぞ」

玄四郎も立停った、「なんです」

「きさまのことだ、何年かまえに妹から聞いたことがある、きさまはみやと密通していた男だ」

「そのことも話します」と玄四郎はなだめるように云った、「人立ちがしますからもう少し歩いて下さい、おちついたところですっかり申上げます」

「酒を飲ませろ」と六郎兵衛が云った。

「そうしましょう」と玄四郎は答えた。

みな川町に「花菱」という奈良茶の店がある。茶漬を売る店だが、寄合のために貸す座敷もあり、酒肴の注文にも応じた。貸し座敷はしばしば禁止されたが、すでに世間の必要なものになっていたので、実際には数が多くなりつつあるくらいだった。花菱は武家屋敷に近いので、茶漬だけの客よりも、座敷へあがって飲む客のほうが多く、玄四郎も太田弥兵衛に伴れられて、幾たびか来たことがあった。

「私は黒田玄四郎という者です」

小座敷へとおって、酒肴がはこばれて来てから、玄四郎は六郎兵衛に酌をしてやりながら、まず名をなのって話しだした。