Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
「おい、子供たち」と六郎兵衛は笑い声のしたほうへ呼びかけた、「誰かいって駕籠を呼んで来てくれ、駄賃をやるぞ」
彼は袂から銭を幾枚か取り出し、手の平へのせて差出した。すると脇のほうで、銭なんかおよしなさい、と云う男の声がした。
「駕籠は呼んで来てあげます、子供に銭なんかいけません、どうかしまっておくんなさい」
六郎兵衛はそっちへ向いた、「銭がどうしたと、きさまはなに者だ」
「そんなに凄みなさんな」とその声が答えた、「躯の不自由な者は不自由なようにおとなしくするもんだ、やい平公、この人を四つ角まで送って、辻駕籠に乗せてやんな」
六郎兵衛は額をあげた。かさねがさねの屈辱で、吐きけのするほど激しい怒りに駆られたが、それは怒りというよりも、すでに一種の快感に近いものになって、もっと徹底的に自分がいためつけられるのを見てやりたい、という衝動さえ感じ始めるのであった。
「芝だ」辻駕籠へ乗ると、六郎兵衛はそう命じた、「芝の宇田川町だ、その辺へいったら酒の飲めるところへ着けてくれ」
駕籠がおろされるまで、彼は冷静に、そしていきり立って坐っていた。冷静に自分を観察し、過去を回想し、そうして今日、酒井邸から始まったそれまでの出来事を、仔細に思い返して、自分をふくめたあらゆるものにいきり立ち、駕籠に揺られながら微笑していた。