Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
大和守は屹と歯を噛みしめた。すると両の頬の筋肉が動き、唇が白くなった。
「改めてうかがいます」甲斐は低く静かに云った、「いまでも某侯は、三十万石分与の密約がはたされるとお考えでしょうか」
大和守は呼吸を荒くし、暫くなにも云わなかったが、やがて振返ると、小姓に向かって、「さがっておれ」と云い、佩刀を取って脇に置いた。小姓は入側から去った。大和守は両手を膝にして、やや仰向きになりながら、眼をつむった。
「存念を申せ」と眼をつむったままで大和守が云った、「遠慮はいらぬ、言葉を飾る必要もない、云いたいだけのことを存分に云え」
甲斐は座をすべって、両手を突いた。
「川越の侍従(松平信綱)が亡くなられたのは万治二年でございました」と甲斐は囁くように云った、「そのとき厩橋侯は御老中、――待従の御意志を継ぐにはもっとも適したお人柄です」
大和守は唾をのんだ、「仙台六十万石の取潰しが成功すれば、加賀、薩摩にも手を付けることができるでしょう」甲斐はそこで叫ぶように囁いた、「――その証文は六十万石改易にかけられた罠です、その罠は目的どおりにはたらき、老中御評定は目前に迫っております、私どもはこういう事態にならぬよう、忍耐のうえにも忍耐してまいりました、罪なくして罰せられる者、無法に刑殺される者、闇討ち、置毒――、幾十人となく血を