Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
「あの男らしい」と七十郎は笑った。
「そんなふうに小心だから、館の警護もつねに厳重だし、ましてこんなときに訪ねても、刺すことはおろか、面会することさえ不可能だと思う」
「それには手がある」
「一ノ関にはいかなる手もきかないんだ」
「きく手があるんだ」と七十郎が静かに云った、「わからないか、――三カ条の誓紙だ」
十左は黙った。
「両後見の誓紙だよ」と云って、七十郎は盃を持ったまま、あぐらをかいている膝の片方を、楽しそうに揺すった、「一ノ関はあの誓紙を欲しがっていた、さっきも云ったように、内通者に命じて盗ませようとさえしたくらいだ、あの誓紙の餌にくいつかない筈はない、間違いなく、必ず兵部はくいついてくる」
「そうかもしれぬが、――おそらくそうだろうが、しかし相手が七十郎では」
「いやおれではない、おれは供に化けてゆくさ」と七十郎は唇を舐め、なにやらうまい悪戯でも思いついたように、こうだ、と云って、片方の手で膝を撫でた、「おれは供に化けてゆき、兵部とは采女が会う、大事の誓紙だからと云って、できれば人払いを求めてもよかろう、取次は断わって、じかに手渡しをすると云う、采女はふところへ短剣を忍ばせておき、誓紙を渡すとみせて刺すのだ」