Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
「易水の故事だな」
「おれは供待ちにいる」と七十郎は続けた、「館の図を書いてもらって、場合によってはもっと近い処へいっていてもいい、騒ぎが起こったら踏込んで、采女が仕遂げていればよし、仕損じたらおれが兵部を仕止める、こまかい点はその場にいってからでないとわからないが、これなら十中八九はやれるだろう」
十左は膝へ両手を突き立て、眼をつむって、深く頭を垂れた。両手を突っぱっているので、肩があがり、頭はその両の肩のあいだに、埋まるように見えた。
「年が欲しい、――」と十左が呟くように云った、「もう四五年、いや、この眼が悪くなるまえだったら」
「おれが助太刀を承知すると思うか」と七十郎は笑った、「これは采女とおれの問題だ、里見老には限らない、いかなる者の助勢もお断わりだ」
十左は頷いた。
「館の図面を頼むぞ」
「詳しくはない、玄関から接待、そして書院までしか知らないが、知っているだけは間違いのないように書こう」
「頼む、それによって手順をきめる」
「気がかりなのは采女どのだ」と十左が顔をあげて云った、「まだ年も若いし、性質もあのとおり温順だから」
「十九歳といえば若すぎる年齢ではない、それに平生おとなしい人間ほど、いざとなると思いきったことをするものだ、ことに、こんどの事の起こりは采女自身なのだから、彼は充分やるに相違ない」