Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
臨終の苦痛が頭を悩乱させる一瞬は、生死を超脱した者でもあらぬふるまいをしやすいものだ。周防が心配したのはその点であり、顔を見たい、と本当に云ったとすれば、彼自身がおそれていたように、悩乱のあまりみれんな気持が起こったのであろう。
――おれはゆくまい。
死の苦痛は長くはない。臨終の苦痛が去って、死の世界へおちつけば、おれが会いにゆかなかったことを、彼はよろこぶであろう。おまえが気をもむことはないのだ、戻って、おれの代りに水をとってやれ、と甲斐は云った。
それは少しも偽わりのない気持だった。いま思い返しても、自分のとった態度は正しかったと思うし、もちろん周防もわかってくれたろうと思う。そのことに疑いはないが、心の奥にある、辛いおもいは消えなかった。
――侍としては立派かもしれないが、人間としては無情すぎる。
惣左衛門はそう云った。云うまでもないことだ。しかし侍としても人間としても、甲斐にはそうする以外にやりようはなかった。甲斐にとっては、それが立派でもないし、無情でもない。そうせざるを得なかっただけであり、心の奥に辛いおもいが残るだけであった。
――辛いおもい。