Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
つぶれるほど酔っているのに、すっかり頭が冴えてしまい、午前二時の鐘を聞くまで、夜具の中で、眼をぎらぎらと光らせていた。
明くる四月二十三日の朝。――采女と七十郎は旅装をととのえて、玄関へ出ていった。式台には奥山出雲と鷺坂靱負が控え、玄関の外には十五人、仙台へ供をしてゆく家従たちが、つくばっていた。
よく晴れた朝で、庭の樹立の若葉が、初夏の陽ざしを斜めに受け、やや強い風に、ひらひらと光って見えた。
采女がさきに玄関へおり立ち、七十郎は刀を脇に置いて、草鞋の緒をむすんでいた。
そのとき事が起こった。
奥山と鷺坂がなにか云い、「御免」と叫びながら、左右から七十郎にとびかかって、両の腕を押えた。まったく突然であり、予想もしないことなので、両腕を押えられたまま、七十郎はぼんやりと口をあけた。
「刀を、刀を、――」と奥山出雲が叫び、奥から走り出て来た若い家従が、そこに置いてある七十郎の刀を取って、とび退いた。そして、そのときには、玄関の外につくばっていた家従たちが、中へ踏み込んで来て、草鞋をはいたばかりの、七十郎の両の足を、二人ずつでがっしと抱えていた。
これらのことは、極めてすばやく行われたのであるが、七十郎の焦点を失ったような眼には、ひどく緩慢に、しかも遠いところの出来事のようにしか見えなかった。