Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
「それはいい」と甲斐はまた呟き、心をあたためられたように、その眉をひらいた。
「二人はいま浅草の誓願寺裏という処に住んでいて、新八さんは唄で稼げるようになったし、おみやさんはその世話をしにかよっているそうですわ」
「まだいっしょではないのか」
「それほどの稼ぎはまだないと云ってます、おみやさんはどこかに奉公していて、ときどき逢いにゆくような話でしたわ」
「それが羨ましかったのか」
「殿がたにはわからない気持かもしれませんが、今日なんぞ」とおくみは艶のある声で、低く笑いながら云った、「此処へ来てから二人は付きっきりで、遠慮なく云いあったり、世話をしたりされたりするのを見ていると、貧乏で食うや食わずでもいいから、こんなふうになりたい、これが夫婦というものだって、しんそこ羨ましくなったんです」
「かよにはそれができる」と甲斐が云った。
広間のほうから、三味線の音締めをする音が、かすかに聞えて来た。
「おまえのしたかったことを、かよにさせるがいい、侍の子だなどという考えは捨てて、町人の娘らしく、暢びりと気楽に育てるのだ、私たちにできなかったことを、かよにはさせるようにしよう」