Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme
毎朝未明に起き、冷水で身をきよめ、隠居所の脇の芝生に出てするのだが、或る朝、いつものとおり稽古が終ると、津多女はひややかな眼で宇乃を見て、云った。
――おまえ薙刀の法を身につける気があるのか。
宇乃はそこへ膝をついたが、なんと答えていいかわからなかった。
――わたしの眼ちがいだったようだ。
と津多女は云った。
――これ限り稽古はやめます。
それでも宇乃にはなにも云えなかった。初め津多女にみつめられたとき、そのひややかな、するどい視線に、身も心もすくんでしまったらしい。あやまる言葉さえ口には出ず、頭を垂れたままふるえていた。
――自分はおばあさまに嫌われてしまった。
宇乃はそのときそう思った。甲斐の母だというだけでなく、宇乃は津多女が好きで、心の中ではつねに「おばあさま」と呼んでいた。津多女の宇乃に対する態度にも、そう呼ぶことを認めているようなところがあった。それだけに、そのときの冷たい凝視は骨にしみるようだったし、眼ちがいをしていたようだ、という言葉は辛辣であった。それから五六日のちの或る夜、夕餉のあとで茶を喫しながら、津多女はさりげない調子で云った。