Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

「あら、もう出ちゃったの」

「いまのは誰ですか」

「心配しなくっても大丈夫、兄のところへむしんにでも来たんでしょ、おちぶれた恰好をして、あたしも見たことのない人よ」

新八は坐った。

「あたしも汗をながそう」とおみやは云った、「新さん済まないけれど蚊遣りを焚いてちょうだい、わかるでしょ」

「わかります」新八は立ちあがった。

彼が干した蓬を火鉢で焚いていると、勝手でおみやが、盥の湯かげんを直すのが聞えた。

それから彼女は六帖へ来て、着物を脱ぎ、裸になって勝手へ戻った。

「新さん」とおみやが勝手から云った、「お使いだてして済まないけれど、そこに糠袋があるから取ってちょうだいな」

新八は「はあ」といったが、煙にむせんで咳こんだ、「どこですか」

「鏡架けの脇に掛けてあるでしょう」

糸で括った糠袋が、鏡架けに掛けてあった。煙がしみて涙の出る眼をこすりながら、彼はそれを障子のところからさしだした。

「こっちへ来てよ、無精ね」とおみやが云った、「そんなところからじゃ届きゃしないわ、こっちへはいって来てちょうだいな」

新八は勝手へはいって、眼をそむけながら糠袋を渡した。おみやはくくっと笑った。