Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
彼はまたもや自分の顕した手落ちを不意に感じ、今はひそかにヨハンの舌を両手で封じたくもなる複雑な気持ちに襲われた。
「白雪はここでしたか。それは非常な失礼をしました」
すっきりと白く立った馬の鬣(たてがみ)は、しかし、梶のこうして心中詫(わ)びる気持ちを、いつともなく吸いとり拭(ふ)き浄めて疲れも彼は忘れて来た。も早や疑うことの出来ぬこの目前の事実だった。彼は暫く遠方の空を仰ぎ見る粛然とした思いのまま、この下の牧場で産れ、ここに自分と対っているこのヨハンに通訳の労をとられた白雪だと思うと、一層その姿が親わしく尊とくも思われて来るのだった。またそれがいつか慶(よろこ)ばしい気持ちにも転じて来て、暫くは眼下に静まった牧場を見降ろしながら、さらに思いもうけぬ意味ふかまったこの眺めだと彼は思った。
その夜、梶とヨハンは前夜のように急がしく所所を見て廻った。しかし、自分の前後に絶えずいるヨハンの姿は、ともにまた絶えず白雪の姿をも泛(うか)べて離れなかった。梶はもう一度最後の別れに、アンナとイレーネに逢いたいと思ったが、それさえヨハンにはついに云い出しがたく黙っていた。