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Japanische Klassiker mit Furigana

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はるはばしゃにのって

機械・春は馬車に乗って

横光 利一

Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme

Aozora Bunko

そうして、彼の暗く落ちついた家の中では、山から運ばれて来る水甕(みずがめ)の水が、いつも静まった心のように清らかに満ちていた。

彼の妻の眠っている朝は、朝毎に、彼は海面から頭を擡(もた)げる新しい陸地の上を素足で歩いた。前夜満潮に打ち上げられた海草は冷たく彼の足にからまりついた。時には、風に吹かれたようにさ迷い出て来た海辺の童児が、生々しい緑の海苔(のり)に辷(すべ)りながら岩角をよじ登っていた。

海面にはだんだん白帆が増していった。海際(うみぎわ)の白い道が日増しに賑(にぎ)やかになって来た。或る日、彼の所へ、知人から思わぬスイトピーの花束が岬を廻って届けられた。

長らく寒風にさびれ続けた家の中に、初めて早春が匂(にお)やかに訪れて来たのである。

彼は花粉にまみれた手で花束を捧(ささ)げるように持ちながら、妻の部屋へ這入っていった。

「とうとう、春がやって来た」

「まア、綺麗(き れい)だわね」と妻は云うと、頬笑(ほほえ )みながら痩(や)せ衰えた手を花の方へ差し出した。

「これは実に綺麗じゃないか」

「どこから来たの」

「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先きに春を撒(ま)き撒きやって来たのさ」