Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぶけわらじ

武家草鞋

山本 周五郎

Lesen Sie 武家草鞋 (ぶけわらじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.835 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

「二俣山、……ええ、そうです」伝三郎はちょっとまごついた、「そうです、それはどちらのほうですか」

「もっとずっと左のほうでございます、いちばん手前にある低い山のずっと左の端に、こんもりと木の繁った小高い処が見えますでしょう、あれが二俣のお城跡でございます」そう云って娘はふと声を曇らせた、「……わたくしあのお城跡を見ますと、いつも岡崎さまのお痛わしい御最期のはなしを思いだしますの、本当になんというお痛わしい、悲しいお身の上の方でございましょう、考えるたびに胸が痛くなりますわ、あなたはそう思し召しませんか」

「人間は正しく生きようとすると」伝三郎はふと険しい口ぶりでそう云った、「……とかく世間から憎まれるものです、岡崎殿の御最期はお痛わしいというより、寧ろ美しい詩だと申上げるほうが本当でしょう、しかしこんな云い方は敗北者の哀れな悲鳴かも知れませんがね」

終りは自分を嘲るような、ひどく棘のある調子だったので、娘はびっくりして大きく眼を瞠りながらこちらを見あげた、伝三郎もいきなりそんな調子でものを云ったことが恥かしくなり、娘の眼かられるようにざぶざぶと顔を洗いはじめた。