Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
青年はしばし四辺を見渡して停止みつおりおり野路を過る人影いつしか霧深き林の奥に消えゆくなどみつめたる、もしなみなみの人ならば鬱陶しとのみ思わんも、かれは然らず、かれが今の心のさまとこの朝の景色とは似通う節あり、霧立ち迷うておぼろにかすむ森のさまは哀れに物悲し、これ恋なり。されどその幻に似て遠きかなたに浮かべるさまは年若き者の夢想を俤にして希望という神の住みたもうがごとく、青年の心これに向かいてはただ静かに波打つのみ。
林の貫きて真直に通う路あり、車もようよう通い得るほどなれば左右の梢は梢と交わり、夏は木の葉をもるる日影鮮やかに落ちて人の肩にゆらぎ、冬は落ち葉深く積みて風吹く終夜物のささやく音す。一年と五月の間にかれこの路を往来せしことを幾度ぞ。この路に入りては人にあうことまれに、おりおり野菜の類を積みし荷車ならずば馬上巻煙草をくわえて並み足に歩ませたる騎兵にあうのみ。今朝もかれはこの路を撰びてたどりぬ。路の半ばに時雨しめやかに降り来たりて間もなく過ぎ去りし後は左右の林の静けさをひとしおに覚え、かれが踏みゆく落ち葉の音のみことごとしく鳴れり。この真直なる路の急に左に折るるところに立ち木やや疎らなる林あり。