Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
はは
母
Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme
「ええ。御気の毒でございますわね。すぐに病院へも御入れになったんですけれど。」
「じゃ病院で御なくなりなすったの? 道理で何にも知らなかった。」
女は前髪を割った額に、かすかな憂鬱の色を浮べた。が、すぐにまた元の通り、快活な微笑を取り戻すと、悪戯そうな眼つきになった。
「もうそれで御用ずみ。どうかあちらへいらしって下さい。」
「まあ、随分でございますね。」
女中は思わず笑い出した。
「そんな邪慳な事をおっしゃると、蔦の家から電話がかかって来ても、内証で旦那様へ取次ぎますよ。」
「好いわよ。早くいらっしゃいってば。紅茶がさめてしまうじゃないの?」
女中が出窓にいなくなると、女はまた編物を取り上げながら、小声に歌をうたい出した。
午前十時と十一時との間、――旅館では今が一日中でも、一番静かな時刻である。部屋毎の花瓶に素枯れた花は、この間に女中が取り捨ててしまう。二階三階の真鍮の手すりも、この間に下男が磨くらしい。そう云う沈黙が拡がった中に、ただ往来のざわめきだけが、硝子戸を開け放した諸方の窓から、日の光と一しょにはいって来る。
その内にふと女の膝から、毛糸の球が転げ落ちた。