Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

女からはすぐまたどうしても一度お眼にかかりたいから、都合をつけて来てくれと云う嘆願の手紙が来たがそれでも彼は往けなかった。往けずに彼は悶え苦しんでいると、女から明日の晩の汽車でいよいよ出発することになったから、父親がいても好いからきっと来てくれと云って来た。そして、汽車の時間まで書いて病院まで来てくれることができないなら、せめて停車場へなり来てくれと書き添えてあった。

心の弱い彼はその望みも達してやることができなかった。そして、二三日して汽車の中で書いたらしい葉書が来た。それは(先生さようなら、永久にお暇乞いをいたします)と書いてあった。

それから二日ばかりしての新聞に、前橋行の汽車の進行中、乗客の女が轢死したと云う記事があった。……

「先生、先生」

黙然と考え込んでいた省三はふと顔をあげた。微暗くなった室の中に色の白い女が坐っていて、それが左の足をにじらして這うように動いた。と、青い光がきらりと光って電燈がぱっと点いた。

室には何人もいなかった。省三はほっとしたように電燈を見なおした。

廊下に跫音がして初めの婢が入って来た。婢は手に桃色の小さな封筒を持っていた。