Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は待ち疲れて女の往っている学校の傍を二時比から三時比にかけて暑い陽の中を歩いてみたが、その学校から数多の女が出て来てもあの女の姿は見えなかった。

彼はまた檜物町の女の棲んでいると云う家の前をあちらこちらしてみたが、それでも女の姿を見ることができなかった。しかし、隣へ往って女の容子を聞く勇気はなかった。

そのうちに一箇月あまりの日がたってから、もう諦めていたあの女の手紙が築地の病院から来た。それは怖ろしい手紙であった。女はあの翌日から急に発熱して激烈な関節炎を起して、左の膝が曲ってしまったために入院して治療をしたが、熱はとれたけれども関節の曲りは依然として癒らないから、一両日のうちに退院して故郷の前橋へ帰ったうえで、どこかの温泉へ往って気長く養生することになっている、明日は午後は父も来ないからちょっと逢いに来てくれまいかと云う意味を鉛筆で走り書きしたものであった。

彼は鉄鎚で頭を一つがんとなぐられたような気もちでその手紙を握っていた。彼は一時のいたずら心から処女の一生を犠牲にしたと云う慚愧と悔恨に閉ざされていた。心の弱い彼はとうとう女の処へ往けなかった。