Japanische Klassiker mit Furigana
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せいひんのしょ
清貧の書
林 芙美子
Lesen Sie 清貧の書 (せいひんのしょ) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.061 Zeichen · 36 Bildschirme
また、私の懐の中には箸や手鏡や、五銭で二切の鮭の切身なんぞが新聞紙に包まれてひそんでいる。
「そんなにゴタゴタしないで、風呂敷へでも包んでしまえよ」
「ええでもこうやって、馬穴をさげて行こうかと思っているのよ」
私達が初めて所帯を持った二階借りの家から、その引越し先の屋敷跡へは、道程から云うと、五丁ばかりもあったであろう。その僅か五丁もの道の間には、火葬場や大根畑や、墓や杉の森を突切らない事には、大変な廻り道になるので、私達は引越しの代を倹約するためにも、その近い道を通って僅かな荷物を一ツ一ツ運ぶ事にした。荷物と云っても、ビール箱で造った茶碗入れと腰の高いガタガタの卓子と、蒲団に風呂敷包みに、与一の絵の道具とこのような類であった。
蒲団はもちろん私のもので、これは別れた男達の時代にはなかったものである。浴衣のつぎはぎで出来た蒲団ではあったが、――母はこの蒲団を送ってくれるについて枕は一ツでよいかと聞いてよこした。私は母にだけは、三人目の男の履歴について、少しばかり私の意見を述べて書き送ってあったので、母は「ほんにこの娘はまた、男さんが違うてのう」そのように腹の中では悲しがっていたのであろうが、心を取りなおして気を利かせてくれたのであろう、「枕は一ツでよいのか」