Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

Lesen Sie 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.240 Zeichen · 35 Bildschirme

Aozora Bunko

息が出来ぬくらいの寒さだった。そして流行感冒がはやっていた。兵営の上には、向うの飛行機が飛んでいた。街には到るところ、赤旗が流れていた。

そこでどうしたか。結局、こっちの条件が悪く、負けそうだったので、持って帰れぬ什器を焼いて退却した。赤旗が退路を遮った。で、戦争をした。そして、また退却をつづけた。赤旗は流行感冒のように、到るところに伝播していた。また戦争だ。それからどうしたか?……

雪解の沼のような泥濘の中に寝て、戦争をしたこともあった。頭の上から、機関銃をあびせかけられたこともあった。

吉永は、自分がよくもこれまで生きてこられたものだと思った。一尺か二尺、自分の立っていた場所が横へそれていたら、死んでいるかもしれないのだ。

これからだって、どうなることか、分るものか! 分るものか! 俺が一人死ぬことは、誰れも屁とも思っていないのだ。ただ、自分のことを心配してくれるのは、村で薪出しをしているお母だけだ。

彼は、お母がこしらえてくれた守り袋を肌につけていた。新しい白木綿で縫った、かなり大きい袋だった。それが、垢や汗にしみて黒く臭くなっていた。彼は、それを開けて、新しい袋を入れかえようと思った。