Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

Lesen Sie 狂い凧 (くるいだこ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.430 Zeichen · 226 Bildschirme

Aozora Bunko

もっともふんぞり返っているのは、そのせいでなく、背の痛みのためだとのことであった。

「こうしている方が、ラクなんでね」

矢木は背中をずり起し、パンヤの枕によりかかる姿勢になった。光線の変化で、矢木の表情はかなり病み老けて見えた。それはある感じがあった。彼は私と同じ齢だったから。

「すまないが、お茶をいれて呉れないか。テーブルの下の扉に、茶器が入っている」

「酔っていたのかね、その時」

電熱器に薬罐を乗せながら訊ねた。

「バスの階段から落ちるなんて、だらしない話だね」

「酔ってはいなかった。酔うとかえって体が無抵抗になって、怪我などしないものだ。しらふだと、どうしてもじたばたとする」

枕もとの葡萄の実を一粒つまんだ。

「大型のバスで、三つ階段がある。その一番上から足をすべらせ、つまりずっこけてしまったんだ。鞄を持っていたし、ずっこけになる以外はなかった。背中には手がないだろう。つかまるすべがなくて、がくんがくんがくんと三度ずっこけ、歩道と車道の角にしたたか腰を打ちつけた。腰がぎくっとなるのが判ったよ」

ていねいに葡萄の皮を剥いて、彼は口に放り込んだ。

「どうして人間の背中なんて、あんなに無防備につくってあるんだろうな。